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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)369号 判決

事実及び理由

原告主張の審決取消事由の有無について検討する。

1  当事者間に争いのない本願考案の要旨及び成立に争いのない甲第二号証によると、本願考案は、上端部に鍔(1)を附設したパイプの上部寄りを反り状に上部鍔(1)が垂直になるまで曲げた支柱(2)を二本対向立設して双方の上部鍔(1)を接合し、ボルト(3)などにより止着してアーチ枠(a)を形成する構成を有しており、このような構成により、一本のパイプで形成したアーチ枠に比して、積雪等による上方からの加圧に対しより丈夫であり、また、組立も容易であるなどの作用効果を奏するものであることが認められる(別紙図面(一)(〔編註〕省略)参照)。

一方、成立に争いのない甲第三号証によると、第一引用例のものは、主杆(14)と支杆(15)とからなるトラス材を対向してその各自由端に、上下に爪片(18)を設けた連結部材を固着し、この爪片(18)を軸杆(12)の上下に付設した枢着板(17)の左右端に対向して枢動自在に取着したアーチ型テント枠構であつて、右各トラス材の自由端には爪片(18)を備えた<省略>状連結部材が固着され、右連結部材は、上下に枢着板(17)を附設した軸杆(12)を介して連結された構成を有しており、このような構成により、組体及び解体が簡易迅速に行うことができ、また、トラス材の配置を整定するのに利便であるなどの作用効果を奏するものであることが認められる(別紙図面(二)(〔編註〕省略)参照)。

2  ところで、本願考案と第一引用例のものとを対比検討するに当り、(a)第一引用例のものにおける前記の主杆(14)と支杆(15)とからなるトラス材を一体的にとらえることは可能であり、その場合には、このトラス材が本願考案のアーチ枠を構成するパイプに相当するものとみることができるから、相対向する右トラス材の先端部に位置する連結部材である爪片(18)を備えた<省略>状部材を固定部材としたうえ、これが本願考案における右パイプの上端部の鍔と対置せられるべきものとし、また(b)第一引用例のものにおける固定部材が、上下に枢着板(17)を附設した軸杆(12)を介して互に連結されている関係上、右軸杆を本願考案の接合止着する部材すなわちボルトと対置せられるべきものとすることがあながち不合理であるとは解せられない。

3  ところで、右両者がそれぞれ二個の相対向するパイプ又はトラス材を結合させるとの機能において共通であるとしても、その構成は前記1に認定のとおり著しく相違しているのであり、また、作用効果も同一ではないのである。したがつて審決がこのような点について説示するなど特段の配慮をすることなく、ただ単に、「後者(第一引用例)の固定部材は前者(本願考案)の鍔に、後者の軸杆は前者のボルトにそれぞれ相当する。」とのみ記述したにとどまる点は、適切を欠くというべきである。

4  しかしながら、本願考案の構成上右の点に関連する部分、すなわち二本のパイプのそれぞれ上端部に鍔を附設してこれを対向させ、ボルト等を用いて右鍔を接合止着することは、いわゆるフランジ継手と称せられる結合手段であるところ、このようなフランジ継手又はフランジ継手による結合は、パイプの結合技術として極めて広く行われている慣用手段であつて、このような結合が、通常パイプの強度を高め、また結合方法として比較的簡易なものであることは周知のことであり、このこと自体は原告も自認するところである。

5  そして、本願考案の明細書及び図面(甲第二号証)を仔細に検討しても、右周知のフランジ継手又はフランジ継手による結合の技術を本願考案に係るガレージの支柱たるパイプに適用するについて技術上特に困難な点があつたとする記載はないのみならずそれを推認すべき合理的理由も見出しえない。したがつて、右の点は当業者において極めて容易に想到できるところであつて、格別の考案力を要しないものというべきである。

このように、本願考案における支柱(パイプ)を二本対向し、双方の上部を接合止着する点には特段の考案とみるべきものがなく、しかもこの点は審決が本願考案と第一引用例のものとを対比するに当り、その対応関係を述べたものであり、審決はこれに引き続いて本願考案と第一引用例のものとの異同点を明らかにしたうえその相違点について逐次判断をしている(この両者の対比判断については、原告の争わないところである。)ことに鑑ると、本願考案の鍔とボルトとが引用例のものにおける固定部材及び軸杆に相当すると認定した点は、本願考案に進歩性がないとした審決の結論には影響を及ぼさないものというべきである。

6  以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は理由がなく、採用することができない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕本件考案の要旨は左のとおりである。

上下両端部に鍔を附設したパイプの上部寄りを反り状に上部鍔が垂直になるまで曲げた支柱を二本対向立設し、双方の上部鍔を接合止着してアーチ枠を形成し、このアーチ枠を数個所定間隔を置いて土台に立設して下部鍔により固定し、各アーチ枠間両側部の上下部に補強横桟を架設し、各アーチ枠の外側に周壁止着桟を適当間隔を置いて止着し、この周壁止着桟に覆い板を附設して成るガレージ。

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